以前、商売をしていた我が家では、店先にお客様が入ってこられることから、入りやすい引き戸を取り付けていました。
その引き戸には三ケ所の施錠箇所がありましたが、いずれも同じカギを使用することから、防犯上、少々心もとないところもありました。
姉がお嫁に行くことになった時、いつでも帰ってこられるようにと母が実家である我が家のカギを持たせようとしたのですが、あいにく本数がなく、スペアを作ることになりました。
作ってくるようにと頼まれた私は、あまりにも簡単に、そしてあっという間にスペアができたことにびっくりすると同様、これがどこかで作られてしまった暁には、簡単に家に入られると不安になりました。
そこで、開錠できてもドアそのものが動かないようにと、父が閂を作りました。
原始的な発想ですが、引き戸そのものを閂が押さえるので動かず、効果的でした。
これを毎晩夜になると行って、安心して眠ることができたのです。
その後、商売をやめて普通の家になり、玄関も引き戸からドアへと変わりました。
このドアのカギは非常に優秀で、ドア一枚一枚に形状の異なる仕上げがされていることから、同じメーカーの同じドアでも、他のカギでは開錠することができません。
しかも、二か所ある施錠箇所のうちの下の部分は施錠したあと、サムターンと呼ばれるつまんで回す部分を取り外すことができるのです。
これによって外部から仮にガラスを切られ手を差し入れられても、上はサムターンを握って開錠できますが、下は握るところがないためどうやっても開錠できないということになり防犯対策は万全です。
またスペアも作れない構造になっているので、紛失したときはシリンダーごと交換することになります。
紛失してもスペアを作るだけで済んだであろう前の引き戸に比べ、紛失した際の出費は高くつきますが、空き巣被害が多発している治安に不安のある国になってしまった以上、カギの性能が安全を守ると言っていいのではないでしょうか。